- 業種
- 自治体・官公庁
- 都道府県
- 愛媛県
- 利用人数
- 1000名
- 形式
- クラウド版
西予市は愛媛県西南部に位置し、多彩な自然を抱える街。西は宇和海に面し、東は高知県に接し、東西に広い市で総面積は514.34平方キロメートル、東京都の1/4ほどの広さがあります。海と里と山があり、特産品はみかんのほか、魚介類、農産物、酪農まで実に豊富です。西予市役所としては2017年には日経ニューオフィス賞の四国ニューオフィス推進賞を受賞するなど、オフィス改革に積極的に取り組んでいるという特徴もあります。
そんな西予市では2007年にパッケージ版 Garoonを導入後、15年にわたりGaroonを利用しています。2018年に同じサイボウズのクラウドサービスであるkintoneも導入し、2019年にGaroonはクラウド版へ移行しました。それぞれの使い方と、クラウドを利用している背景について政策企画部 政策推進課 情報推進室 室長 上甲 宏之さん、係長 山村 正志さんにお話を伺いました。
INDEX.01 導入後の経緯
導入から15年以上活用
災害対策と業務効率化のためクラウドに移行も
――Garoonを長年ご利用いただきありがとうございます。ご利用状況を改めて教えてください。
上甲さん:2007年にパッケージ版 Garoonを導入し、15年以上利用しています。2016年に私が管理担当となり、2018年には外部業者とのやりとりを行う目的でサイボウズのクラウドサービスkintoneを導入しました。その後2019年にGaroonもパッケージ版からクラウド版へ移行しました。
――パブリッククラウドの利用は自治体にとって先進的な取り組みかと思います。西予市様ではなぜクラウド移行に踏み切ったのでしょうか?
上甲さん: クラウド移行した大きな理由は、外出時の業務効率の向上と災害対策です。以前は外出先でGaroonにアクセスできなかったため、出張から帰ると通知が溜まり、その処理に追われる…ということがよくありました。クラウドならオフィス外からもアクセスしやすく、どこでも情報が確認でき、業務効率の向上が見込めると考えました。
また2018年7月に西日本豪雨災害が発生したとき、被害の大きかった支所では本庁までのネットワークが不通となり当時オンプレで運用していたGaroonにアクセスできなくなったことがありました。被災状況や連絡事項をGaroonの掲示板で共有していたので、情報の共有が行えずとても大変な思いをしました。クラウドなら内部ネットワークが不通となったり、市役所が被災したりしても安定して利用でき、BCP対策にもなります。オフィス外からのアクセスのしやすさ、災害時の安定利用を目的としてクラウド移行を決定しました。
――クラウドはセキュリティが不安、費用が高いとの声もありますが心配はありませんでしたか?
上甲さん: セキュリティはもちろん重要ですが、クラウドだからといって必要以上に不安視しないようにしています。サイボウズは日本のメーカーで、国内のデータセンターで運用され、データのバックアップもしっかり取られているので特に問題なく運用できると考えています。 クラウドならサーバーなどハードウェアの管理が不要で、バージョンアップも自動で行われるため常に最新の機能が使えます。オンプレの場合、サーバーのスペックを考えながら運用を考える必要がありましたが、移行後はソフトの使い方だけ考えればよいので管理の負担が減りました。数年に1度のバージョンアップ作業やサーバー更新がなくなるので予算計画も立てやすいです。ライセンス費用だけ比較するとクラウド版はパッケージ版より高いですが、サーバーの購入構築費用や削減できる運用工数を考えれば十分安いと思います。
クラウド移行のメリット | Before | After |
---|---|---|
外からのアクセス | 外出時にアクセスできない | 外出時もアクセスしやすい |
災害対策 | 市役所が被災すると利用できない | 市役所が被災しても 安定して利用できる |
運用工数 | サーバーの管理やバージョンアップの 対応が必要 |
サーバーの管理やバージョンアップが 不要で運用工数が低減 |
サイボウズのクラウド基盤のセキュリティについては以下をご覧ください
INDEX.02 活用方法
業務に必要な全ての情報をGaroonに集約
外出・災害時の情報共有もスムーズに
――Garoonは現在どのように利用されていますか?
上甲さん:業務に必要なほとんどの情報がGaroonに集まっています。スケジュール、施設予約、メッセージ、スペース、ワークフロー、掲示板などほぼ全ての機能を利用しています。スケジュールはほぼ全員が入れていますね。ほとんどの予定を公開で登録していて、基本的には、時間が空いていれば誰でも予定を登録してよい運用です。昔は事前に口頭で調整をしていましたが、今は市長でもGaroonのスケジュールが空いていたら自由に予定登録してよい文化ができ、上長との心理的な距離も縮まった気がします。Web会議システムとの連携も進めています。
――約1000名の職員の方が使いこなせている理由はどこにあるのでしょうか?
山村さん:さまざまな職員が利用するので、やはり使いやすさが大事だと思います。Garoonはマニュアルを見ずに直感的に利用できるので操作について問い合わせが来ることはほとんどなく、高齢の職員も含めほぼ全員が使えています。新しい機能も職員同士で教え合って使いこなしているようです。職員がGaroonのマニュアルを見て自分で操作方法を学べるよう、アプリケーション名は変えず、なるべく標準のまま利用するなどの工夫もしています。
――クラウド移行されてから3年経ちますが、パッケージ版と比較してどのような変化がありましたか?
山村さん:外出中でもGaroonにアクセスできるようになったので、その場でスケジュールを確認してパッと予定を決められるのが便利です。さらにクラウド移行をきっかけに紙で行っていた申請業務をワークフローに置き換えたため、出張中でも申請や承認ができるようになり意思決定までの時間が短縮されました。
また災害時にも安定して利用できるようになりました。もし市役所が被災してもGaroonにアクセスできる安心感があります。台風や地震など災害が見込まれる場合や実際発生するとGaroonの掲示板に情報を集約するので、自宅からでもリアルタイムで様子がわかります。夜間に災害が発生した場合でもGaroonを見れば最新の情報が得られるので、初動の判断がしやすくなりました。
――オフィス外からGaroonを利用するときにセキュリティ対策はどうしていますか?
上甲さん:スマートフォンや貸出用パソコンで外部からアクセスする場合は、Basic認証をかけ、さらに利用できるアプリを、スケジュール、ワークフロー、掲示板に絞っています。他のアプリも利用したい場合は、庁内と全く同じシステム環境が使える仮想デスクトップ用のパソコンを必要に応じて貸し出しています。
INDEX.03 活用効果
働きやすいオフィス改革を支えるGaroon
――西予市様は2017年に日経ニューオフィス賞の四国ニューオフィス推進賞を受賞されています。オフィスを拝見しましたが、開放的で働きやすそうな印象を受けました。オフィス作りにはどのように取り組まれているのですか?
上甲さん:西予市では2015年から生産性の向上に向けてオフィス改革に取り組んでいます。作業に集中したいときはオフィスのデスクで、アイディアを話し合いたいときはフリーの打ち合わせスペースで…など仕事によって場所を移動し自由に仕事ができる環境を目指し、環境整備を進めてきました。
これまでに、庁内ネットワークの無線LAN化、ペーパーレス化、Web会議の整備、打ち合わせスペースへの常設モニタ設置などを行いました。以前は決められた自分の席でしか仕事ができませんでしたが、今はオフィス内のどこにいても作業ができ、必要な時にさっと集まって打ち合わせができます。
2016年に職員の会話量を計測したところオフィス改革前後で全体では約5倍、3-4階級異なる職員同士の会話は7.2倍増加し、コミュニケーション活性化につながっています。
オフィス改革の様子は西予市様のfacebook公式アカウントでもご覧いただけます。
――オフィス改革の中で、Garoonの効果を感じる場面はありましたか?
上甲さん:オフィス改革にはICTの活用が不可欠です。紙の資料のデジタル化や、申請業務のオンライン化を進め、業務に必要な情報をGaroonに集約することで、自分の席に縛られずどこでも作業ができるようになりました。
職員同士のコミュニケーションにはGaroonのスペースやメッセージを利用していますが、テキストでやりとりをして、その続きを打ち合わせで直接話し、打ち合わせ後のやりとりはまたスペースで…といったように、オンラインとオフラインを行き来しながら業務を進めています。どこにいてもGaroonで繋がっていて、必要なタイミングですぐにコミュニケーションが取れるようになったことで、職員の初動が早くなったように感じます。
――改めてGaroonは日々の業務のなかでどのような位置付けですか?
上甲さん:全ての業務がGaroonから始まり、職員はGaroonを見て動きます。個人のスケジュールや会議室の予約、ワークフローなど全てがGaroonに集約されているので停止すると職員への影響が一番大きいシステムです。フリーアドレスだと誰がどこにいるかわからなくなりますが、Garoonを見ればすぐ連絡が取れますし、何かしら情報がわかる。職員同士をつなげる基盤となっています。
機能名 | 主な活用方法 | 効果 |
---|---|---|
スケジュール | 職員の予定の共有 打ち合わせの事前情報、資料の共有 |
口頭での事前調整がほぼ不要になり 予定調整が効率化 |
掲示板 | 災害時の情報共有 職員への通達 |
災害時の被災状況などがすぐわかり 迅速な初動が可能に |
スペース メッセージ |
プロジェクトの情報共有 職員同士のコミュニケーション |
場所によらず職員同士 すぐ連絡がとれる基盤に |
ワークフロー | 庁内の申請業務 | 申請・承認のオンライン化により 意思決定までの時間が短縮 |
INDEX.04 今後の展望
持続可能な自治体に向けさらに活用を促進
――Garoonとkintoneを今後どのように活用していきたいですか
山村さん:あらゆる情報がGaroonに集まっているので、どこに何があったかわからない状況も増えてきました。今後は機能ごとにどのようなシーンで使うべきかのルールづくりをしていきたいと思っています。
またkintoneについて、現在は少数のユーザーで外部業者とのやりとりに利用していますが、今後利用する職員を増やし、市民サービスの向上へ繋がるものや外部の事業者との情報共有などの業務で活用を広げていきたいです。また、現在エクセルで管理している台帳が多くあるのでそれらを置き換えていきたいと考えています。
――西予市様の情報システム全般の展望を教えてください。
上甲さん:西予市の情報システム全体でクラウド化しているのはまだ1-2割程ですが、今後可能なものは順次クラウド化していく方針です。基幹システムも自治体クラウドという形で外に出すことを計画しています。地方自治体では人口減少、少子高齢化、財政悪化といった課題がある一方、多様化する市民サービスへの対応、コロナ対策などの新しい仕事も増え続けています。クラウドでシステムの運用管理を外部に任せることで、自治体職員が本来やるべき仕事に集中できます。働き方や業務を見直し、新しい手法を開拓しながら、生産性を向上させ、持続可能な自治体の確立を目指していきたいと考えています。
INDEX.05 詳しい使い方
スケジュール・掲示板・ワークフロー
スペース・kintone
スケジュールで打ち合わせをスムーズに
スケジュールで打ち合わせの事前情報を共有。アンケートプラグインも活用。Web会議システムとの連携も。
予定は全てGaroonのスケジュールに登録。アジェンダや資料など打ち合わせの事前情報もスケジュールで共有しています。
無料で利用できるアンケートプラグインを利用し、スケジュール上で簡易アンケートを作ることもあります。
今後はWeb会議システムとの連携も進めています。プラグインなどの拡張機能は今後も積極的に利用していく予定です。
アンケートプラグインについては以下をご覧ください
掲示板で迅速な情報共有
災害時の緊急情報から、議論の過程まで。幅広い情報共有に活用
災害時の情報共有など、職員への情報周知に掲示板を活用しています。オフィス改革についての「部長のささやき」のように、決定事項の通達にとどまらず、議論の過程の共有にも利用しています。
ワークフローで申請をペーパーレスに
紙の申請業務を電子化し効率化
クラウド移行をきっかけに、それまで利用していなかったワークフローの活用を開始。以前は紙で行っていた申請業務を電子化しました。情報システムの利用申請やソフトのインストールなど幅広い申請業務で利用しています。
スペースを職員同士のコミュニケーションに利用
プロジェクトや部門ごとにスペースを作成しフランクにやりとり
プロジェクトや部門ごとにスペースを作成し業務に関する連絡を行なっています。現在361あるスペースは職員全員が見られる公開設定になっているものも多く、メインの担当者以外でも気になったことがあればアドバイスをコメントする、といったコミュニケーションも生まれています。
kintoneで外部とのやりとりを効率化
外部業者とのやりとりをメールからkintoneへ。Garoonのスペースとも連携。
以前はメールでやりとりしていた保守を行う外部業者とのやりとりをkintoneのゲストスペースで行うようにしました。
kintoneのアプリで管理している案件管理やコンタクト履歴はGaroonのスペースにも表示し、アクセスしやすいように工夫しています。
取材日 2022/04/19
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