- 業種
- 製造
- 都道府県
- 東京都
- 利用人数
- 1500名
- 形式
- クラウド版
- 導入前の利用製品
- パッケージ版 Garoon
- 導入パートナー
- 株式会社内田洋行
「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」ことをグループ経営理念とし、小麦、大豆、菜種、トウモロコシなどの穀物を、小麦粉、プレミックス、植物油、糖化製品、配合飼料などに加工することで、多様な食のニーズに応えている昭和産業株式会社。
同社は2021年にパッケージ版 Garoonをクラウド版に移行しました。その経緯について、移行に関わった情報システム部 情報システム課 課長 野田 郁子さん、同課 金井 正子さん(現 業務システム課)、林 茉優さん(現 秘書室)にお話を伺いました。
INDEX.01 導入前の課題
スケジュール管理を全社統一するためGaroonを採用
――はじめに、2011年にパッケージ版 Garoonを導入するまでの経緯をお聞かせください。
野田さん:グループウェアの利用歴としては、1996年にNotesを導入し、活用してきました。しかし、スケジュール管理機能はサイボウズ Officeやサードパーティ製のソフトのほうが使い勝手が良かったので、部署単位で別途導入していました。その後、スケジュール・設備予約は全社で共有できたほうが便利なため、スケジュール管理をGaroonに統一することにし、2011年にパッケージ版のGaroonを導入しました。
――導入後、Garoonの利用範囲が広がったそうですね。
野田さん:Garoonは最初スケジュール管理だけを利用し、掲示板をはじめとした情報共有基盤はNotesを継続利用していました。しかし2種類のグループウェアを併用することは、運用負荷とコストが二重にかかりよろしくありません。そこで、2012年にNotesの機能をGaroonへ移行することを決定し、調査を開始しました。NotesではなくGaroonを選んだ理由は以下の通りです。
- 1.Webブラウザで利用できる(各端末にクライアントソフトの導入が不要)
- 2.Garoonのほうが維持費用が安かった
移行作業は2年計画で行い、初年度は掲示板とデータベース(DB)、翌年にメール機能を移行しました。NotesDBは内容とアクセス権を整理したうえで、サイボウズのデヂエや専用のwebシステムへ移行しました。
INDEX.02 クラウド移行
オンプレミス環境での性能不足、
サーバー更新時のマンパワーの問題解決を目指して
――2021年にクラウド版Garoonに移行されましたが、どのような課題があったのでしょうか?
野田さん:オンプレミスの場合、サーバーのサイジングがうまくいかないことが課題でした。利用者が増え、派遣社員も含めて1500名ほどで利用するようになった中で、サーバーの設計が追い付かず、レスポンスが低下。サーバーへの負荷増大による画面表示の遅延が発生したり、社内メールとして使っているGaroonのメールが届きづらかったりする状況でした。
金井さん:特に出社のタイミングに全員がアクセスすることになるため、毎朝現場から電話がかかってくるような状況でした。問い合わせに応対しても結局「申し訳ない」「なんとか解決する方向に持っていくのでしばらくお待ちください」と伝える日々でした。メモリを増設し、多少は改善しましたが、そんなことをずっと続けていくわけにもいきません。結果として、抜本的なスペック不足解消に向けて、クラウド化を検討することになったのです。
野田さん:ソフトウェアのバージョンアップもサーバー更新時にしか実施できていませんでした。安定稼働中のシステムを止めるリスクや、仕様が変わる箇所をマニュアル化して周知する必要があるためです。その結果、サーバー更新は課の一大イベントとなり、そのために必要なマンパワーも課題でした。2016年の更新では計画から完了までのべ5か月もかかりました。そこで次のサーバー更新(2021年2月)を見据えてクラウド化へ舵を切ったわけです。
――移行プロジェクトの全体スケジュールについて教えてください。
野田さん:2020年5月に調査を開始し、8月にベンダー複数社からクラウド版 Garoonへの移行提案をいただき、内容を精査しました。10月に社内稟議を終え、12月から実際の移行作業に入り、翌2月にカットオーバーしました。
――パッケージ版 Garoonをクラウド版に移行する際に、他のソリューションは検討されましたか?
野田さん:他のソリューションは検討しませんでした。実際Garoonの運用はうまくいっており、ユーザーの負担も考えるとグループウェアを変更する理由はありませんでした。当社はNotesからGaroonへ移行した際にその大変さを経験していますし、Garoonと連携しているワークフロー等のソリューションも設計変更が必要になります。
――パッケージ版 Garoonで運用していた機能は全てクラウド版に移行されましたか?
野田さん:掲示板、施設予約、スケジュールを移行しました。メールに関しては、社内用メールをGaroon、社外用メールをCYBERMAILΣと分けて運用してきましたが、この機会にCYBERMAILΣに集約し、Garoonメールの利用を終了しました。
林さん:データ移行を情報整理の機会ととらえ、各部署の掲示物など、一部のデータは現場の社員に移行してもらいました。もし外部委託でデータを一括移行してしまうと、本当に残したい情報以外も移行してしまうことになりかねません。そこで作業の費用感を説明したうえで、あえて現場に協力をお願いしました。もちろん、掲示板など直近の情報をまとめて移行するものや、デヂエライブラリのうち移行件数が非常に多いものは、事前に整理したうえで社外に移行作業を委託しました。
Garoonのメールデータも、長期保管が必要な人だけ自分で書き出して保存できるようにマニュアルを作成しました。クラウド移行から半年間はサーバーを閲覧権限で稼働させておき、過去情報が参照できる猶予期間を設けたこともよかったと思います。
――移行期間が3か月という短期間で終わったポイントはなんでしょうか?
野田さん:一つは今申し上げたように移行データをしっかり取捨選択したことです。もう一つは内田洋行さんご提案による移行プロジェクトの計画管理です。サイボウズのクラウドサービスは毎月第2日曜日に定期メンテナンスがあり、不具合修正や機能追加により仕様が変わる場合があります。そのため定期メンテナンス終了から翌月の定期メンテナンスまでの1か月間で移行を完了させる必要がありました。移行プロセスとしては、別途移行用のGaroonサーバーを当社契約IaaSに用意し、そちらにデータを順次移行。パッケージ版とクラウド版Garoonのバージョンを同じにしておく必要があるため、この移行用サーバーでバージョンアップを行いました。クラウドへのデータ移行もリハーサルを実施して所要時間を試算し、移行データにも問題がないことを確認しました。このような方法で、運用中のパッケージ版 Garoonに影響が少ない形で進めることができました。
林さん:クラウド移行時にアクセス権の見直しもしたのですが、内田洋行さんに相談しながら進めることでスムーズに検証できました。
――Garoonのクラウド移行にあわせてデヂエの環境も整理されたそうですね。
林さん:デヂエが2023年にサービス終了を迎えるため、このタイミングでデヂエを終了することにしました。具体的には、デヂエの一覧と直近1年間の使用状況を各部署に渡して、本当に移行が必要なのか確認してもらいました。確認の結果、移行が必要な217個のライブラリのうち、ほとんどがファイル共有の用途でした。そのためkintoneのようなDBに移行する必要がなく、社内に広く公開するものはGaroonのファイル管理に置き、更新頻度の多いものはファイルサーバーに置くことにしました。事前にデヂエ内の情報を棚卸したことでスムーズに移行できました。
デヂエのサポート終了についてはこちらをご覧ください。
INDEX.03 移行の効果
レスポンスの不満解消で快適な利用環境を整備
――クラウド版Garoonへ移行したことで、どのような効果を得られていますか?
金井さん:パッケージ版時代のような遅延の問い合わせがなくなり、使い勝手に関する不満を解消できました。
野田さん:クラウド移行と導入パートナーのサポートのおかげで、問い合わせ対応時間が減りました。以前は調査を含めた対応で年間のべ約400時間もかかっていたのですが、今では不具合に関する問い合わせがなくなりました。サイボウズが自動的にバージョンアップして改善してくれているためです。オンプレミス運用と比べるとコストアップになりましたが、ユーザーは不具合なく利用できています。システム管理者の負担軽減や、管理者が異動しても安定した品質の管理体制を築けた効果も大きいと思います。また、クラウド化したことでユーザー単価が明確になり、アカウント管理の意識が高まりました。
パッケージ版(オンプレミス) | クラウド版 | |
---|---|---|
ハードウェア 管理 |
・ハードウェア更新の工数が大 ・サイジング最適化には専門的な知識が必要なため業者に委託 |
・ハードウェア更新が不要 ・サイジング不要 ・遅延に関する問い合わせがない |
ソフトウェア 管理 |
・バージョンアップやパッチ適用の作業が必要 ・ハード更新時以外は対応できず |
・セキュリティ対策、最新機能が提供される ・不具合に対する問い合わせ対応工数も削減 |
運用管理 | ・インシデント発生時のシステム管理者の負担が大きい ・維持コストがわかりにくい |
・システム管理者の負担が減少 ・維持コストが明確 |
――クラウド版に移行して運用に変化はありますか?
野田さん:パッケージ版のときからGaroonと連携させているワークフロー「Create!Webフロー」がオンプレミス環境でしたので、オンプレミスサーバーとクラウドサーバーを連携させるためにIDaaS「CloudGate UNO」を導入し、シングルサインオン化しました。前述の通り、社内メールと社外メールの二重運用もなくし、メール機能は社外用に使用していた「CYBERMAILΣ」に一本化しました。社内のコミュニケーションでは「CYBERCHAT」も使っています。
――今回移行作業を手掛けた内田洋行さんについては、どのように評価していますか?
野田さん:以前の保守ベンダーは、サイボウズに詳しいエンジニアが社内にいなくなってしまい、外部に再委託していたことからお返事に時間がかかることも。内田洋行さんは、社内に専任のエンジニアがいるため、返答までの期間が大幅に短縮されました。
金井さん:メールでの問い合わせに加えて会議を通じても的確に回答いただけており、手厚い支援にとても助かっています。サイボウズのこともよくご存じで心強いです。
林さん:定例会では問い合わせや回答の状況をまとめてご報告いただいています。記録として残るため、後から改善や振り返りにも活用でき、助かっています。
INDEX.04 今後の展望
権限やアカウント管理の徹底、kintone導入に意欲
――Garoonの利用ついて、今後どのような展開を計画されていますか?
野田さん:現在は特に問題なく使えていることから、あまり大きく手を広げる予定はありません。ただ、運用管理権限については再考していきたいです。現在は、フォルダー設計等を柔軟に変更できるように、一部の部署で運用管理者を設定しているのですが、異動や交代で後任者の教育がきちんとできているのかが懸念事項です。NotesやGaroonのオンプレミス時代のように、情シスで集中管理していくべきかは検討の余地があると思っています。
ユーザー機能については、ポータル画面の改善を予定しています。今までのポータル画面はデフォルト設計のまま使っていましたが、スケジュールをたくさん登録しても、ワークフローや掲示板の新着通知が隠れないレイアウトに変更します。
林さん:私が情報システム部に在籍してGaroonを担当していたときには、オンラインセミナーにも参加しており、便利な新機能が出るたびに紹介いただいていました。おそらくもっと便利な機能がたくさんGaroonに備わっているはずで、ユーザーの立場としてフル活用していきたいと思っています。
――Garoonの周辺サービスの展望についてはいかがでしょうか?
野田さん:サイボウズのクラウドサービスである「kintone」の利用を考えています。エクセルで管理している台帳類や簡易データベース等を、より使いやすい形にしていきたいです。
――kintoneもあわせて活用をご検討いただけているとのことで光栄です。貴重なお話をありがとうございました。
INDEX.05 詳しい使い方
掲示板、SmartRooms連携、
ファイル管理、ワークフロー、Create!Webフロー連携
掲示板は主管部署別に整理
部署別の掲示板ではアクセス権や権限移譲も活用
社内横断で利用する掲示板を上方に配置、それ以外の掲示板は部署別にまとめ、主管部署がわかるようになっています。部署別の掲示板はアクセス権を設定し、情報を適切に管理しています。また、運用管理権限を主管部署の担当者に付与し日々の運用を任せています。
スケジュールとSmartRoomsを連携
利用実態に合わせた会議室管理を実現
パッケージ版のときからGaroonとSmartRoomsを連携させています。会議室の前に設置したSmartRoomsの端末には、Garoonに登録した予定のタイトルや時間、参加者が表示されます。また、SmartRoomsの端末で「利用登録」「延長」「退室」の操作を行うとGaroonのスケジュールに反映され、会議室の予約状況の確認と空き部屋の有効利用ができます。
ワークフロー製品の申請状況をポータルで確認
Create!Webフローとの連携で確認をスムーズに
パッケージ版のときから使っているワークフロー製品「Create!Webフロー」とGaroonを連携させ、Garoonのポータルから申請の処理状況を確認できるようにしています。ワークフローの情報をポータルの見やすい位置に配置することで、確認しやすくしました。
デヂエで管理していたファイルを
ファイル管理に移行
テキスト情報のみの場合は「ダミーファイル.txt」を利用
デヂエはGaroonのファイル管理に移行しました。kintoneも候補に挙がりましたが、データベース的な利用はほとんどなく、マニュアル、規程、レシピ、市場調査結果などのテキスト情報が多かったので、Garoonのファイル管理で十分でした。
なお、ファイル管理は添付ファイルがないとデータをアップロードできない仕様ですが、デヂエではテキスト情報のみでも保存ができていました。そのため、テキスト情報のみのデヂエ文書をファイル管理にアップロードする方法として、「このファイルは、添付ファイルのない情報を『ファイル管理』に登録するためのダミーファイルです。」と書かれた「ダミーファイル.txt」を用意して添付する方法を考案しました。「ダミーファイル.txt」は開く必要がないことを周知していますので、ユーザーは「ファイルの説明」欄のテキスト情報を確認するだけで済みます。
デヂエで行っていた社内募金を
Garoonのワークフローに移行
申請データをCSVで書き出して給与引きの手続きに利用
当社では大規模災害等の際に社内募金を実施しており、その申込をデヂエで行っていました。現在は、Garoonのワークフロー機能を募金専用にして運用しています。募金の受付期間だけGaroonのアプリケーションメニューに表示し、終了時に非表示にします。 承認ルートは「ユーザー→募金受付担当」のみです。また、ユーザーは自分が申し込んだ内容しか見えないよう、アクセス権を設定しています。申請データはCSVで書き出し、申し込んだ人の給与から募金額を差し引くときに利用します。
取材日 2022/7/11
導入パートナー企業