- 業種
- 製造
- 都道府県
- 大阪府
- 利用人数
- 150名
- 形式
- クラウド版
- 導入パートナー
- 株式会社大塚商会
昭和40年創業の幸和製作所は、お年寄りの散歩や買い物をサポートする歩行補助具、いわゆる"シルバーカー"という製品分野をいち早く開拓したパイオニアだ。様々な企業が参入したことで競争が激化した現在の国内シルバーカー市場においても、シェア50%を維持している。現在では、シルバーカーやその発展形だけにとどまらず、車イス、杖といった移動補助具、さらには入浴関連や食事関連などの介護補助具に至るまで、幅広い分野の製品を「Tacaof(テイコブ)」ブランドで展開。
並み居る競合を制し、「福祉用具の総合メーカー」として成長を遂げるためには、意思決定のスピードアップが求められる。そして、意思決定のスピードアップのためには「Garoon on cybozu.com」(以下「Garoon」)と「kintone on cybozu.com」(以下「kintone」)が不可欠だったという。
その導入までの経緯、および、現在の利用状況を同社のシステム担当者にうかがった。
INDEX.01 導入前の課題
競合他社の6倍のペースで高品質な新製品を生み出すには
消費者や販路からの情報活用が不可欠
幸和製作所の企業理念は、より多くの人が幸せに、そして心豊かに日常生活を過ごせるよう、"よりよい製品づくり"を目指すことだ。高齢者人口が増加し、福祉用具全般の市場が拡大していく中で、この企業理念を実現し続けるためには、ビジネスのスピード感が重要だと考えており、他社は年間で30種類程度の新製品を出しているところ、幸和製作所では年間200種類以上の新製品をリリースしている。販路としては、介護と量販店という2つのチャネルがあるのだが、ホームセンターや大手スーパーといった量販店の場合は、次々に新たな製品を求められるという。
「もちろん、売れ行きを考えての要望ですが、やみくもに製品数を増やすわけにはいきません。弊社では年間1000通を超える購入者からのアンケートはがき、あるいは市場動向を綿密に把握し、それを社内でしっかり共有することで、他社を圧倒するペースで新製品を送り出せていると自負しています。」
シルバーカーはお年寄り本人よりも、その子供や孫が母の日や敬老の日のプレゼントとして購入することが多い。その点も考慮して、同社の製品ラインナップにはカラフルでおしゃれなものが多い。このように市場ニーズにあわせた製品を、スピード感を上げてリリースしていくために、開発と営業だけでなく、修理窓口や直販サイト担当なども含め、様々な部署間で情報交換や意思疎通を図っている。そうして全社から集まってくる情報をデータ化し、開発方針を判断する材料にしているのだ。
また、対象がお年寄りや体の自由がきかない方々だからこそ、品質にも相当なこだわりを持っている。シルバーカーなどの福祉用具は、国家標準であるJIS(日本工業規格)で基準が定められていない。そのため、日用品の安全性保証を目的とした一般財団法人製品安全協会のSGマークの認可を受けることになるが、同社ではそれだけでは不十分だと考えている。より高い強度を目指した独自基準を社内で設けている。そうした独自基準の作成と、しかも形骸化しないよう維持するためには、どうしても社内の各部署間での密接な連携が不可欠なのである。
INDEX.02 導入の経緯
クラウド型グループウェアの中で
経営層とシステム管理者の
双方が納得した「Garoon」を選択
そうした情報共有の効率化に対する意識の高さに加えて、最近では、順調な業績拡大を受けて、3年前から毎年10人単位で新卒採用を行っている。中途採用も含めると前年比で、社員数が約115%のペースで急激に増える中、これまで以上に業務スピードを向上させるためには、より効率的に情報共有を行う必要が生じていたという。
そこで、全社的なレベルでの情報共有環境の刷新を検討したが、その際に最も重要視したのがクラウドという形態だ。以前は、社内にサーバーマシンを置いて基幹システムを運用していたが、バックアップなどの日々のメンテナンスに苦労してきた。例えば、誰も出勤していない土日は夏場でも空調を止めているため、週明けに出社するとサーバーマシンがオーバーヒートしていたという経験がある。しかし、製品開発や顧客対応、経営判断に至るまでグループウェアをフル活用して情報共有を行うためには、安定して運用できることが絶対条件だ。その条件を満たしたのが、監視体制や設備の充実したデータセンターで提供されるクラウドサービスだった。さらに、導入にあたって、セキュリティ面も十分に検討した。データを自社内で管理することと、セキュリティの高いデータセンターを持つクラウド環境に預けることを比較した結果、グループウェアの運用はむしろ専門のサービス提供会社に任せてしまったほうが安全だと判断したのだ。同社では、「現金を自社内に置いておくことと、銀行に預けることでは、セキュリティ体制の整っている銀行に預けるほうが信頼できるのと同じこと」と考えているという。これらの観点から、クラウドサービスとして利用可能ということを前提に、いくつかのグループウェア製品を精査。最終的に絞り込んだのは、「Google Apps for Business」「0ffice 365」「Garoon」の3製品だ。
この3製品の比較では、経営層からのオーダーであった「ITリテラシーがあまり高くない社員でも使いこなせること」、「いつでも・どこでも・PCやスマートフォンでワークフロー決裁ができること」の2点に加えて、システム管理側から「ユーザー管理やアクセス権コントロールに手間がかからないこと」という要件を重視した。「Google Apps for Business」は、必要な機能をサードパーティー製のオプション郡から選定する必要があり、自由度が高い一方で、管理が複雑になってしまう。システム担当者が一人で導入から社内への展開を行うには、ハードルが高かった。また、「Office 365」と「Garoon」の比較では、実績や導入事例の豊富さで「Garoon」にアドバンテージがあると感じた。最終的に、経営層とシステム管理のいずれの要求にもマッチする「Garoon」の導入を決断した。
その結果、大幅な業務効率化に成功し、「もはやグループウェアなしでは業務は回らない」という状況だという。特に、利用者の定着が早かったのは、長年にわたり、日本の企業で利用され、様々な意見を取り入れてきたサイボウズ製品ならではの利点だと感じている。
INDEX.03 導入の効果
社内のペーパーレス化が9割まで進み
意思決定のスピードが劇的に向上
以前はメールや紙ベースだった社内の伝達事項をすべて「Garoon」の掲示板へと移行するとともに、申請書などに関しても可能な限りワークフローへ移行。ペーパーレス化は9割近くの達成度を実現し、「ほとんど紙は見なくなった」という。「Garoon」のワークフロー機能を活用することで、現在では、人事、総務、経理から、開発、営業まで、大部分の申請書を電子化。稟議書はもちろん、金型申請書といった専門的なものまで含めて、全部で100程度の申請フォームが使われている。
「以前の"1枚1枚押印して、次の担当者に紙を回す"という状況から比べれば、手間の面でも時間の面でも格段の差がありますね。また、弊社の場合、押印する立場の上長や取締役は外出や出張の機会が非常に多く、いつもどこかで承認が止まってしまっているという状況でした。現在では外出先でもiPadやiPhoneを使って承認作業ができるため、移動中や空き時間などに小まめに行ってもらえるので、決裁スピードが上がりました。早く承認が下りるとその分現場は早く動けますから、全社の業務スピードが向上しています。」
また、「kintone」については、物流センターで主に不良品の報告・情報管理に利用しているほか、利用者からの製品に関するフィードバックなどの管理にも活用している。「kintone」は現場での情報入力・管理の効率化、またペーパーレス化にも大いに貢献しているわけだが、導入効果はそれだけではなく、経営的な視点で言えば、その場で分析ができるという点が非常に有用だったという。「kintone」は、使いようによってはBI(ビジネスインテリジェンス)ライクな活用も可能だ。例えば、会議の中で不具合対策を話し合う場合には、以前はスタティックな表や図として眺めながら検討を行っていた。しかし、それは担当者の視点で見た切り口にすぎないもので、会議中に違う角度で見ればまた新たな傾向が見出せるのではないかと思いつく場合も多いものだ。
そこで、「kintone」の画面を眺めながら会議を行うことで、様々な切り口でデータを表示させたり、グラフでの視覚化も気軽に行える。例えば、ある製品で不具合が発生したとしたら、それで終わりではなく、その箇所はどこなのか、同じ部品が使われている製品で不具合の可能性はないのか、あるいはどこで作られた、どのロットの部品なのかといった深いレベルまで視覚的にたどっていけるというわけだ。「こうした使い方ができるというのは、少し驚き」だと同社の経営層は感じており、実際に経営判断のスピードも大幅にアップしたという。
INDEX.04 今後の展望
トップダウンとボトムアップの
双方向からのグループウェア活用推進
をさらに究めていきたい
このほかにも同社では「Garoon」の様々な機能を活用し始めている。「スペース」機能も積極的に活用し、プロジェクトごとに個人がそれぞれに半期ごとの目標を立てるといった用途のほか、勉強会のスペースなども設けており、資料の掲示、情報交換に利用。特に海外のメンバーとの情報交換にも、より活用していきたいと考えている。
幸和製作所において、グループウェアの導入はもともと経営層からのトップダウンで進められたものである。しかし、上記のようにボトムアップでの浸透も確実に進んでいる。ステレオタイプな見方かもしれないが、福祉・介護の関連製品というと、どうしても堅実で地味なものが望まれ、メーカーの姿勢もそれに準じているのではないかという先入観があったのはたしかだ。しかし、実際はそうではない。福祉・介護分野は、今後ますます活発化が見込まれる市場であり、利用者の意見に細かく耳を傾けながら、積極的に新しい取り組みを行うことが求められるものだ。そして、幸和製作所は「Garoon」「kintone」という道具の力を最大限に引き出すことで、福祉・介護分野のさらなるレベル向上に取り組もうとしている。
取材日 2012/10/30
導入パートナー企業