- 業種
- 自治体・官公庁
- 都道府県
- 鳥取県
- 形式
- LGWAN-ASP版 パッケージ版
- 導入パートナー
- 株式会社大塚商会
「星取県」「蟹取県」「鳥取砂丘へのポケモン誘致」・・・ユニークな取り組みが目を引く鳥取県では、情報システムでも全国初の取り組みを行っています。
鳥取県内の全自治体で情報共有を行う「とっとり行政イントラ」。2017年2月に運用を開始したこのシステムにサイボウズのGaroonをご採用いただきました。システム導入の中核を担ったのは、鳥取県及び県内全市町村で組織する「鳥取県自治体ICT共同化推進協議会(事務局:鳥取県情報政策課)」(以下「協議会」)です。
今回は協議会の行政イントラ部会のメンバーである、鳥取県総務部情報政策課 上杉課長、下田課長補佐、阪本主事、にお話を伺いました。
INDEX.01 導入前の課題
容量オーバーや情報の分散・・
メールの課題を解決できる新たなツールを探していた
—まず協議会について教えてください。どのような目的で設立されたのですか?
協議会は次の3つ取り組みを目的として設立されました。
・情報システムの共同調達や運用管理
・情報セキュリティ対策
・ICT分野の人材育成
「とっとり行政イントラ」は「情報システムの共同調達や運用管理」の一環で調達したものです。情報システムは複数の自治体で共同利用をすることで、従来よりもコストを抑えて運用できます。従来システムのコスト削減はもちろんですが、より良い行政サービスを行うための攻めの取り組みもやりやすくなります。「とっとり行政イントラ」はまさに攻めの取り組みとして導入しました。
—自治体どうしの情報共有にグループウェアを利用するというのは、先進的な使い方ですよね。なぜこのような使い方を考えたのですか?
鳥取県には全部で19の市町村があり、以前は自治体どうしのやりとりはメールが中心でした。一方で、我々鳥取県庁の中では昔からグループウェアを使った活発な情報共有を行っていて、この有利さを常々感じていました。
メールだとやはり前後の経緯がわかりづらいですよね。やりとりの途中で、それまでの文章を消してしまったら、過去の経緯がわからなくなってしまいます。また、宛先に入っている職員しか確認できないので、業務の進捗確認や、不在時のフォローがしにくい部分もあります。さらに、受信容量を制限している自治体もあり、容量の大きな添付ファイルが送れない、などの問題も発生していました。
多様化する住民ニーズに応えるためには、自治体どうしで情報共有をシームレスに行なう基盤が必要になります。グループウェアなら、メールで起きていた問題を解決し、よりスピーディな情報共有ができるようになると考えました。
INDEX.02 導入の決め手
Garoonの良いところは
「使いやすさ」「LGWAN-ASP」
—19市町村の合意を得るのはかなり大変だったのではと思います。どのように検討を進められたのですか?
市町村の職員から、自治体間のメールの容量制限によってメールが届かない等の問題について、たびたび相談を受けていたので、共通の課題意識をもっていたのだと思います。県からの提案がきっかけでしたが、特に反対する団体はありませんでした。共同調達、共同運用に向けた検討にあたっては、まず協議会内に「行政イントラ部会」を立ち上げ、団体間の情報共有についての課題や自治体を超えた情報基盤をつくるための足場固めをしました。いくつかのベンダーに来てもらい、実演デモを見たりして、実際に体験することで、団体間を繋ぐグループウェア導入の有効性を共有していきました。
—Garoonの良い点はどのようなところですか?
まず、グループウェア導入にあたっては、「ユーザーどうしで広く情報共有ができるコミュニケーション機能があること」が大前提でした。Garoonはスペースでそれが実現できます。操作がわかりやすく直感的に使えるのも良いと思いました。
もう1つ、我々が調達時の仕様として特にこだわったのは、グループウェアをLGWAN-ASPとして導入することでした。自治体で扱う情報は、基本的にインターネット環境から分離された環境で扱うため、当初から「とっとり行政イントラ」はセキュリティを担保されているLGWAN環境で使うことを想定していました。さらにASP型の採用により運用コストを抑えたいとも考えていましたのでLGWAN-ASPとして使えるところもGaroonの良い点です。
INDEX.03 導入効果
幅広い業務で「スペース」を活用
自治体どうしの連携が加速
—ご導入から約1年たちました。Garoonはどのように利用されていますか?
現在、主に利用している機能はスペース(ディスカッション機能)です。業務ごとにスペースを作成し、情報のやりとりをおこなっています。具体的には、監査分野、税務、防災対策、職員の研修、次世代エネルギー推進分野、厚生分野、情報セキュリティ・・・など、活用業務は多岐に渡ります。現時点で約200のスペースが立ち上がり、ほぼ毎日利用しています。
—自治体どうしのやりとりをスペースで行うメリットはどのようなところで感じますか?
まず過去の情報の蓄積ですね。やりとりが時系列に整理されるので、あとから見返したときに経緯がすぐにわかるのが便利です。スペースに情報が集約されているので、担当の職員が不在にしているときでも、他の人がフォローしやすくなり、業務の進捗管理にも大きく寄与しています。人事異動で担当者が変わった際の事務引継ぎにも有効です。 また、添付ファイル容量が大きくても、気にすることなく安心して情報共有できることも大きなメリットです。
スペースは、あらかじめアクセスできる職員を設定するので、利用者が書き込むスペースさえ間違えなければ、内部で機密情報が漏洩することはありません。もちろんLGWAN環境なので、外部へのメール誤送信もありません。情報漏洩防止の観点でも大きな安心感があります。
また、たとえば各自治体間で照会・回答を行う場合、「どの自治体が」「いつ」「どんな回答をしたのか」が全て共有できるのも良いです。メールだと自分の自治体の回答しか見えませんでしたが、スペースだと他自治体の回答状況もリアルタイムに共有できます。
同じ自治体の中だったら、ちょっと隣の課に行って「どんな回答してる?」と様子を聞いたりもできますが、自治体をまたぐとそういうことは難しい。でもスペースを使うことで、「他はこんな回答をしているんだな」と他の自治体の回答を参考にすることができます。団体の枠を超えてグループウェアを活用する効果はそういうところにもあると思います。
「まずは慣れてもらう」を優先 オープンな使い方で利用を促進
—市町村の方にも利用が進んでいるのですね。利用促進のために工夫されていることはありますか?
最初のうちは、事務局がスペースの活用メリットや簡単な利用イメージ等をまとめたリーフレットを自作して、全団体で職員に配信するなど、地道な活動もしました。システムは、導入しただけではなかなか利用は浸透しません。新しい仕組みを始めるときには、こうした地道な施策も重要だと考えています。
また、スペースに慣れていただくために、職員が新たにスペースを作成するための条件は、最小限にしました。主な条件は、2つ以上の自治体間の職員がスペースに入っていることです。これを満たしていれば、誰でも自由にスペースを作って良いことにしています。
その他、職員が遵守すべき共通ルールについては、「とっとり行政イントラ管理運用要綱」(以下、「要綱」)を協議会で策定し、徹底することで、現在のところ大きな問題なく運用できていると思います。
—運用のルールはどのように決めているのですか?
運用のルールは全て協議会で決めています。
たとえば、各自治体は、自組織内の課代表ユーザーを必ず登録するようにし、どんな種類の行政業務であっても、すぐに運用開始できるようにしています。その他のユーザーのアカウント登録については、それぞれの自治体の判断におまかせしています。
また要綱では、システムの総合的な管理者や各団体のシステム管理者、スペースの管理者を定義し、それぞれの役割や責務などを規定しました。県や市町村においてそれぞれ導入しているグループウェアの運用で得たノウハウを共有しながら、県と市町村が知恵を出し合って作成しました。
INDEX.04 今後の展望
行政のインフラとしてあらゆる分野で活用していく
—これからGaroonをどのように活用していきたいですか?
行政のあらゆる業務にこのシステムを活用してもらいたいと思っています。鳥取県は東西100kmくらいある横に細長い県です。各自治体の職員が集まって会議をするとなると、団体によっては往復の移動時間が3時間かかるケースもあります。職員も忙しい中、頻繁に会議をすることは大きな負荷になることもあります。
もちろん、対面での会議は基本ですが、軽易な意思決定についてはわざわざ対面での会議を開かなくてもよい場合もあります。
対面でなくてもできる意思決定をGaroon(とっとり行政イントラ)上で行うことで、会議や移動にかけていた時間を別の業務の時間に活用できる。このような意思決定のスピード化は、大きな働き方改革の一環だと思っています。
協議会では、今年の4月に県内全市町村立学校に学校業務支援システムを一斉導入し、共同運用する予定です。これも全国初の取り組みで、各方面から注目いただいているのですが、この学校業務支援システムの運用に向けた検討や調整でもGaroon(とっとり行政イントラ)がコミュニケーションの基盤になっています。Garoon(とっとり行政イントラ)は本県自治体の重要なインフラになりつつありますし、なっていくべきだと思います。今ある運用課題を一つ一つ整理しながら、様々な分野で活用できるように取り組んでいきたいと思っています。
取材日 2018/05/01
導入パートナー企業