第3回 ユーザー会レポート
社内システムのクラウド活用
2011/09/16開催
今回は、社内システムのクラウド化をテーマにお話しいただきます。
懇親会では「ガルーン」の掲示板活用が話題に上り、iPadをお持ちのユーザー様が自社の運用を紹介してくださり、利用を促進するコツや、活用事例など、活発な情報共有が行われるなど、盛り上がったユーザー会の様子をお届けします。
参加企業名 | 業種 | 導入 | ユーザー数 | 利用中の製品 |
---|---|---|---|---|
A社 | サービス業 | 2004年 | 530名 | ガルーン 2 |
B社 | サービス業 | 2010年 | 350名 | クラウド版「ガルーン」 |
C社 | サービス業 | - | 800名 | ガルーン 3、リモートサービス |
D社 | 建築・設計 | - | 650名 | ガルーン 1 |
INDEX.01 社内システムの現状
社内システムのクラウド移行は、
特に震災以降検討が進んでいる
CY:本日はお集まりいただきありがとうございます。今回は、社内システムのクラウド化をテーマにお話しいただきたいと思います。初めに、現在の社内システムの運用状況を教えてください。
C社:現状は自社でサーバーマシンを立てて、パッケージ版の「ガルーン 3」を使っています。イントラネット環境に「ガルーン 3」を置いてありますが、外出の多いエリアマネージャーは、「リモートサービス」を利用して、セキュアな環境でモバイルから「ガルーン」にアクセスしています。社内の情報共有は、社内メールや掲示板などを活用し、ほとんど「ガルーン」で行っていますが、震災をきっかけにクラウド移行も考えています。
B社:社内でグループウェアの利用が定着したころに、サイボウズをインストールしていたサーバーマシンが壊れてしまい、担当だった私は大変怒られました。そのときから、機械は必ず壊れる。機械が壊れた場合でも運用を止めないためにはどうしたらよいかということを考えており、去年の秋にクラウド版の「ガルーン」を導入しました。バージョンアップの作業などシステムの管理から、解放されて建設的な業務に集中できており、利用メリットを実感しています。
A社:企画業務に専念できるという点では、クラウド移行に魅力を感じていますが、セキュリティやアクセスログ、コスト面に課題があり実現していません。導入するとなると、グループウェアやメールは比較的進めやすいと思いますが、顧客情報のクラウド化は難しいと感じています。ほかにも、例えば、ホテルの場合は予約システムなど、業種や企業独自のシステムを社外に出しにくいと考えています。
震災後の災害対策をきっかけに、クラウド移行を検討
CY:お客様から東日本大震災がきっかけで、クラウドの活用を検討し始めたという話を聞くことが多いのですが、本日お集まりいただいた皆様はいかがですか。
C社:東日本大震災のときは、本社がかなり揺れ、サーバーマシンの物理的な破損に備えて対策が必要だと感じるようになりました。また、緊急時の社内での連絡手段についても検討を進めている状況です。
D社:有事の場合は特に、社内でスムーズに連絡が取れる状況にあることが理想的です。当然、ガルーンのようなコミュニケーションツールはクラウド上にあったほうがよいと考えています。他のシステムも含めて、データセンターを利用するコストを試算しているところです。
ポイント
クラウド移行の企業では、効果を実感。
未導入の企業でも、移行検討が進んでいる
導入済みの企業は、自社サーバーでの利用にデメリットを感じたことをきっかけに、クラウド移行が進んでいます。また、未導入の企業でも、震災が一つのきっかけとなりクラウドへの移行を検討するケースが増えています。
INDEX.02 メリット・デメリット
クラウド活用のメリット・デメリット
クラウドは自社に合わせた運用がしづらいことがデメリット
CY:続きまして、社内システムをクラウド化するメリット・デメリットを教えてください。
A社:クラウドを利用する場合、自社に合わせたカスタマイズがしづらいのではないでしょうか。また、ソフトウェアのバージョン管理を自社で行うことができないこともデメリットです。
D社:そうですね。現在、「ガルーン 1.5」バージョンを使っているのですが、ユーザーインターフェイスの変更などがユーザーに与える影響を考えると、なかなか最新版へのバージョンアップに踏み切れずにいます。
システムの管理の負担は、大幅に軽減
A社:その他には、システムをクラウド化してすべて業者に任せきりになってしまうと、システムの価格の相場観がわからず、提供会社の言い値になってしまうのではないかという不安があります。委託する作業の内容や、ボリューム感がある程度分かっていないと、適正価格がわからないと思うのです。
B社:そうですね。ただ、クラウドを利用すると、サーバーマシンの管理ノウハウが不要になるため社内のシステムの専門家は最小限で済みます。また、「ガルーン」のように直感的に操作できるユーザーインターフェースを採用しているサービスであれば、運用ノウハウが少ないメンバーでも管理者になることも可能です。システムのクラウド化を進めると、コスト面以外のところで確実に会社の負担が減ります。
C社:サーバーマシンの管理は、大変ですよね。1年に1回、入居しているビルの計画停電があり、それに合わせて社内のサーバーマシンの電源を落とす必要があります。昨年はちょうどお盆期間で代理店に頼むと料金が割高だったため、自社で作業をしました。しかし、手順を間違えてシステムにアクセスできない状態になってしまいました。結局、システム管理者が会社に何日か泊まりこんで対処することになって大変でした。そんなときは特に、もしクラウドに移行していればなぁ、と思います。
ポイント
クラウド活用と従来のパッケージ版の利用では、
システム管理コストの差が大きい
クラウドを検討中の企業でも、システム管理負担の軽減は、魅力の一つとなっています。一方で、自社でサーバーマシンを用意して運用する場合は、バージョンアップのタイミングなど自社の状況に合わせたきめ細やかな運用がしやすいというメリットがあります。
BCPへの期待
D社:クラウドの活用は、災害対策としても有効だと思っています。今回は被災地が東北で、通信の関係で数日使えない程度で済みましたが、ガルーンのサーバーマシンを置いている東京が被災する事態に備えなくてはいけないと考えています。
B社:クラウドを利用しても、100%安全性が確保されるとは言い切れませんが、データセンターなら設備が冗長化されているため、自社で管理するよりは確実だと思っています。
コストについての考え方
A社:弊社で一般的なサービスをクラウドで運用する場合と、自社サーバーで運用する場合のコストを試算してみたのですが、3年半以上使う場合はクラウドのほうが割高になることが多かったです。クラウドに移行されているB社さんはコスト面について、どのようにお考えですか?
B社:弊社は、絶対に止まらないことが第一優先でした。自社サーバー運用で、絶対に止まらないシステムを構築しようとすると、かなりのお金と手間がかかるんです。それを含めても細かく計算をすればパッケージ版のほうが安いのかもしれませんが、お客様へのサービスに支障を来すことの影響を考えると、今一番必要なのはいつも止まらないサービスでした。そのため、より確実性が高いと思われるクラウドサービスを利用することにしました。
A社:コストありきで考える会社があれば、コストをかけてでも、システムを止めないことが重要だという会社もあり、会社によって重要視する部分は違うのでしょうね。私たちシステム管理者の立場としては、止めちゃいけないとは思うのですが、会社として万が一の場合にシステムが止まらないことにどのくらいの価値を置いて、どのくらいのコストをかけるのが適正かは、判断が難しいですね。
ポイント
企業として重視するポイントに合わせて、
システムの運用形態を判断
パッケージ版からの移行を検討しているお客様は、クラウドを利用する際のコスト試算に課題を持っていました。運用状況や、どこまでをコストに含むのか(初期費用だけではなくランニング費用・バージョンアップなどのメンテナンス費用、さらにはサーバーマシンを持った場合の電気代など)によって、試算結果が変わるためです。一方で、すでにクラウド移行を実現したお客様は、自社で必要な要件を明確にしたことがポイントになったことがわかりました。
クラウド運用のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
障害や問題が起こった場合の責任を自社から切り離すことができる | 万が一何かが起こった場合に自社だけでは原因追求できないリスクがある |
ビルの計画停電への対応など定期的なメンテナンス業務から解放され、安定した運用ができる | サービス業などの場合、顧客情報を外に置く場合の社内規程などを事前に策定する必要がある |
緊急時の通信障害のダメージやデータ消滅のリスクを軽減することができる | 自社開発のシステムはクラウド化がしにくい |
深夜のバージョンアップ作業からも解放され、他の建設的で売上に繋がる企画業務にその時間を回すことができる | バージョンアップが自動的に行われることが多く、利用バージョンを選ぶことが難しい |
いつでもどこでもどんなデバイスからもデータを見ることができるので、仕事の柔軟性が広がり効率的になる | 全部業者に任せきりになってしまうと、システム価格の相場やトレンドがわからなくなり、提供会社に価格をコントロールさせてしまうリスクがある |
INDEX.03 まとめ
今後の展望
B社:将来、究極のクラウドとしてシンクライアントを導入したいと思っています。それまでに、クラウドの信頼性が担保されているというのが前提ですが。導入が実現すれば、データ漏洩などのリスクを低減しつつ時間や場所に捉われない柔軟な働き方が可能なため、効率的です。今は、個人のデータ以外、共有するデータはほぼクラウドで管理していますが、私たちのような拠点がたくさんある業態にとって、メリットです。
CY:ありがとうございました。社内システムのクラウド化は障壁やデメリットもある中、関心が高まっているようです。災害対策や、システム運用コストの軽減などメリットも評価されており、今後は活用シーンが増えてくるのではないでしょうか。
取材日 2011/09/16
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